地図の上から人は見えない 【1-2】



床が見えてきたところで真っ暗になった我が家

うちはアウトドアというか釣りをよくするので

いろんなものがある

天井からLEDの懐中電灯をぶら下げ夕食を終える

さすが亭主

乾電池式の携帯充電器を出してきた

小野にメールする

「飯は?明かりはあるの?水は?」

返事なし

旦那が1m幅のクーラーボックス二つに

うちにあった水や食料、アウトドア用品なんかを詰め込み

小野家に向かう

運ぶものがいっぱいあったので車を動かし

携帯を充電しながら駐車場でしばらくテレビを見ていた

絶句したわ

これはいったい何なんだ

何が起こっているのか

これからどうなるか

想像さえも許さない映像

名取壊滅 荒浜壊滅 陸前高田壊滅 大船渡壊滅 相馬壊滅 七ヶ浜壊滅 

壊滅壊滅ってアナウンサーが繰り返し言ってる

そして気仙沼大炎上

区役所まで津波がきたっていう若林区は結婚前住んでたわ

まだあの場所にいたら家なかったわよ

とにかく考えてもはじまらない

今を生きることしかできない

小野のマンションの非常ベルは止んでいた

家の明かりがないだけで

町は怖いくらい暗い

小野家に入ると子供たちが騒々しかった

懐中電灯が一個しかなく

食べ物も電気ガス水がないとどうにもできないものしかないらしい

旦那がカセットコンロを取り出して

とりあえずお湯を沸かし、ラーメンを作る

電気も水もガスも全滅だということをはじめて知った

いつ使うんだ?と思ってたものが役に立つ

動きを感知して照らす置き型ライトをトイレ前と玄関に設置

家族の人数分以上あった懐中電灯をダイニングとリビングに二つずつぶら下げ

なんとなくでも快適になった

子供たちまで手がまわらないが

うちの長女が全員をめんどうみて寝かせてくれた

頼むぞ5年生!

むしろ6年生!

でもこいつが一番の恐怖だったろう

小野の長女とうちの次女は同級生だ

離婚前からだが

小野が仕事に出ているため

娘が学童に馴染めないというので次女と一緒にうちに帰宅させ面倒みていた

離婚後もそうやってうちで預かっていたが

なぜか小野の会社からオレに声がかかり一緒に働くことになった

この地震がきた時間

小野の娘とうちの次女は教室の中だった

いつもの訓練が役にたたないくらい揺れたろう

机の下に隠れようとしても机がジッとしててくれない

そして長女

体育の時間だった

校庭で地震に遭い

外のおぞましい景色を見ている

立ちくらみかと思うくらい視界が歪む中

小学校前にある家屋の屋根が接がれ

外壁が崩れ落ちた

津波の心配のない地域だと言われてるゆえ

校庭に集めて保護者引渡しの下校体制をとる

中にいた子は上靴のまま

外にいた子は体操服のまま

親を待つ間も雪は降り、寒かったはずだ

あの地震が後数十分遅かったら

子供たちはいつもどおりうちに帰ってきていた

そしてこのうちの中で地震に遭い

あの惨状の中、怪我をしていただろう

怖くなって外に出たかもしれない

そして探せなかったかもしれない

そう考えると学校にいた時間でよかったと思う

小野の下の子は幼稚園で徒歩帰宅組だった

幼稚園は2時降園だ

遠い子はバスで送られている時間だったろう

津波の被害に遭った地域の子供たち

バスごと流され

バスの上に先生が乗り

手を差し伸べて子供たちを救出したらしい

でも

手が届かなかった子

掴んだのに離してしまった子

遠くに投げ出された子

助けられなかった子たちが半分以上だ

先生が悪いんじゃない

でも彼女たちはずっと自分を責めるだろう

身体的にも精神的にも人に与えた傷が大きすぎる

何年か掛ければ土地は復旧して景色はいくらか元に戻る

人はそうはいかない

死ぬまで背負い続けるしかない


子供たちが寝た後、小野とうちの夫婦だけになった

あまり疲れてないのが不思議だった

一日を振り返ってみる

子供たちを送り出して

小野は9時出社

車で行く

オレは10時出社

チャリで行く

会社まで3kmほどだ

朝会社に行くと小野とオレの机には

手書きの見積書が山になって置かれている

それを雑談しながら打ち込んでいく

これがまー

難解な字を書く社員ばかりで

パッと見、ヘブライ文字だぞ

てか社長の字が一番わからネェ━━━━(゚A゚;)━━━━ !!!!!

オレなんて建築用語がまずわからんからな

なので予想がたてられない

養生って字が

社長の下書きを見る限り

完璧なまでに「芝生」って書いてある

芝生 一式 5000円

よく考えるとありえネェ━━━━(゚A゚;)━━━━ !!!!!

けど芝生以外読み取れネェ━━━━(゚A゚;)━━━━ !!!!!

壁紙のクロスなんて「702」にしか見えネェ━━━━(゚A゚;)━━━━ !!!!!

あははははははははははははははははは
あははははははははははははははははは

が、半年もするとほとんど読み取れるようになるから不思議だ

うちの事務職はみんなコナンだ

難解なのは字だけじゃないからな

社員の「あーなんだっけ、あの半年くらい前にやった改修工事の見積からPBの平米数入れといて」

そんな元請け名もわからない漠然としたヒントから探し当てる

小野は事務もこなすが基本は原状回復担当だ

賃貸物件の退去後に入る業者さんd(゚ё゚* )ネッ

そして宅建主任者の資格をもってるから

不動産部のメインでもある

オレの仕事は基本的に小野の補助だ

元々馴れ合いのある関係ゆえ

気を使わない

その日も小野の手元が忙しくなり

見積はこっちにまわせと全部処理をした

不動産部は繁忙期

会社自体決算期でやってもやっても仕事が増える

そこで契約の客が日にちを間違え来店した

津波に遭遇した中川さんと現地調査に行く予定だったが

契約には小野が不可欠だから

オレは他の客の相手をするために会社に残った

無事契約を終え管理会社の人がたまたま近くにいたため立ち寄った

ここらへんが午後2時

ひと段落して一服する

そういえば2,3日前地震あったよな

って話になった

3月9日に三陸沖震度5の地震があった

うちは震度4だ

小野が外回りをしてて

中川さんが小野の机

オレの隣だが

に座って書類を作成してた

同じようにドンッと一発目の揺れがあって

しだいに大きく揺れだした

社長婦人に

「押さえておく場所あります?」

と聞く

「まー適当に。大丈夫だと思うけど(・-・*)」

のんきさんだ

そんな中

中川さん

黙々と打ち込んでいる

「中川さん、地震だよ?」

「あーーーーーーーー今、それどころじゃないんですーーーーー!」

あははははははははははははははははは
あははははははははははははははははは

オレと変わらない年齢なのに

客に

「あのメガネかけた中年の担当者」

と称される中川さん

とりあえず ガン( ゚д゚)ガレ

揺れただけで終わった地震

11日午後2時半

9日の地震を話題にし

宮城はでかいのがくるって言われ続けてきたし

ちょうどニュージーランドの地震の被害も毎日のように伝えられてたのもあって

何かしら準備しておかなきゃねー

ねー

(*´・д・)(・д・`*)ネー

って言ってた数分後だった

平和が消えた瞬間


旦那はどうだったか聞くと

仕事に追われて、やっと一息ついた時間だったらしく

昼飯も食いに行ってる場合じゃないってんで

会社にあったカップラーメンに

お湯を注ぎ

できあがるまで携帯のメールチェックをしてたその時

ド━(゚Д゚)━ ン !!!

衝撃で持ってた携帯

カップにIN

あははははははははははははははははは
あははははははははははははははははは

そのままラーメンもどっか行き

何せビルの9階だ

同じ階の各事務所に声をかけ

ドアを開放しつつ

棚とコピー機を守ったようだ

ショックな被害

パソコンが

スケルトンになったよ?

って

あははははははははははははははははは
あははははははははははははははははは

枠が全部外れたみたい

ど━━━(゚ロ゚;)━━んま━━━(゚ロ゚;)━━い

まーいいよ

生きててよかったよ

近所の人たちは地震後一斉に小学校へ避難した

避難場所に指定されてるからな

マンションの下を通る家族が

小野の部屋を指差して

「あ!あそこ電気きてんじゃん!」

と騒ぐ

旦那のおかげで、そう勘違いするくらい部屋は明るかった

電池で携帯を充電するが受信や入電を繰り返すと

常に充電切れ状態

鳴る

名前を見る

「す」

充電心許ねーのに電話してくんじゃネェ━━━━(゚A゚;)━━━━ !!!!!

多摩すず大爆笑

あははははははははははははははははは
あははははははははははははははははは

今回ばかりは心配だったらしい

地震後の数日間

そんな面々からぞくぞく連絡がくる

館長に楽さんに後いろいろ

あ、はしょっちゃった

(*ノノ)キャ



マルオ

「でっかい屁こくんじゃねーよ!こっちまで揺れたじゃねーか」

って

あははははははははははははははははは
あははははははははははははははははは

悪かったわね!!

おかげで快調だ!コノヤロー!



まだまだホッとしていられない初日

小野の妹と両親と連絡が取れない

小野の実家は今をトキメク相馬だ

妹は地元から電車で仙台の会社に通勤している

結婚して旦那の親と同居する妹

これがまた

ビックリするくらい何もできないお姫様で

嫌味も悪意もないので周りが自然と手を差し伸べたくなるような子だ

オレも何度か会っているが

1こ下?嘘だべおい!ってくらい幼い

そんな妹だ

何せ妹の帰宅手段である電車は

常磐線

こんなことになっている

子供同様、地震の時間がずれていたらと思うと恐ろしい

そして唯一の情報源のラジオからは

原子力緊急事態宣言が発表される

相馬の親も心配だ

なんせこの日あの時間

小野父は仙台に向かってたはずだから

小野一族はau

まったく使えない

今回の震災直後、softbankは比較的繋がりやすかった

オレと旦那の携帯から妹と親に5分おきに電話をかけまくる

深夜2時

明日からまた大変だろうから休もう

と言って、最後にもう一回

と小野母の携帯にかけてみる

でた

繋がった

無事を確認し

auがさっぱりなので、何かあったらオレに連絡入れるよう登録させる

ホッとして行動の詳細を聞く

孫を土日相馬で過ごさせるために迎えに来るはずだった

孫を甘やかすのが好きな小野父

うちの次女と同級生な孫娘が塾の曜日は

一人で留守番ができないんじゃないかとわざわざ来る

塾がない日はまっすぐうちに帰宅してオレと小野が帰ってくるまでうちにいる

が、うちの次女なんかはクールなもんで

けっこう一人で何でもできる

だから小野としては自分の娘もそうなってほしいと塾の日くらい

どうせ1時間半程度だ

一人で留守番して慣れてほしいと言い聞かせる

なのに小野父は来てしまう

孫はわがまま放題でもかわいいんだろう

そして

子供たちが何かやらかすとオレに丸投げし

「ほら!かかに叱られるよ!」

って

あははははははははははははははははは
あははははははははははははははははは

小野の子供たちにとって一番の恐怖はオレと旦那らしい

あははははははははははははははははは
あははははははははははははははははは

そんな小野父は夕方にうちに寄って孫を引き取る予定だったらしい

買い物も含め、昼過ぎに家を出て6号線を走っているときに地震に遭った

孫が泣いてるんじゃないかと、いったん走り出したが

自宅にいる小野母とばーちゃんが気になり

引き返した

大正解だった


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津波被害で通行止めのレベルじゃネェ━━━━(゚A゚;)━━━━ !!!!!

道がなくなった

小野父⊂(・∀・)つセーフ!!

そしてうちの夫婦が一緒にいると聞いて

「あらー!また世話なっちゃって!でも安心ね!」

と、何の根拠か勝手に安心しやがったらしく(つA`)オヤスミー



ロビンが言ってた

「地図の上から人は見えない。」

今回の地震被害を数日後にテレビで散々目にすることになるが

土地の欠落は人の犠牲が含まれる

そう考えるだけで胸が痛い

生きてるだけでありがたい

明日からの不安はさほどないが

苦痛に歪む人たちのことを思うと

寝付けなかった








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by kanon_suzu | 2011-04-24 09:38